なんでもノート

文を書く練習・要約のためにと思って開設したブログです。

「教える」という仕事と学校文化Ⅰ

汐見、伊東ほか 『教育原理』 ミネルヴァ書房2016

 

pp.150-151 「教えの過剰、学びの過少」

 

 「教えと学びの弁証法」(p.151)。教師が教えすぎると、生徒の思考を奪ってしまいかねない。そのため、教師には「学びの誘発者」(同上)としての役割が求められる。その際にポイントとなるのが、「異文化体験」(同上)であろう。生徒たちがそれまで持っていた価値観を覆す、もしくはその価値観に反することを生徒に提示してあげれば、生徒も関心を引き立てられやすくなる。

 

 

pp.152-153 「担任の仕事」

 

 授業の基本は、1、基礎的な学力を身につけさせること。2、知識を獲得すること。3、他者を理解し、より深い学びへ。4、既存の価値観を相対化する視点を養うこと。である。中学・高校は教科担当性であるため、小学校よりもより専門性の高い授業が展開されることが求められる。しかし、受験を意識せざるを得なく、教師の専門性が活かされない授業になってしまいがちである。

 また、教員には授業以外にも多量の仕事がある。まず「学級づくり」である。朝の会や帰りの会といったホームルームは、特に中高では大きな役割を果たす。次に、生徒/生活指導。生徒の体調の変化を敏感に感じ取り、適切に対応することが求められる。これは教師が生徒の信頼感を獲得することにもつながる。出席簿や指導要録[i]・成績処理、通信簿、教育委員会からの調査資料の提出などさまざまな、資料整理や提出資料、作品提出が求められている。

 

 

pp.154-155 「授業と教材研究」

 

 教材研究は、より豊かな授業[ii]を形作るために重要であると同時に、「教師のマンネリを防ぐ一番の保障」(p.155)にもなっている。

 また、教員には研究を受ける義務・権利が教育公務員特例法により守られている。学内研修(校内研修)は、1、「学校でテーマを決めて行うものである」(p.155)。テーマは、学校目標や子どもの実態から考え、2、学年、もしくはグループ毎に研究テーマを設定する。3、具体的筋立てを決め、4、実際に研究授業を行う。5、最後に報告会が行われる。評価方法としては、PDCAサイクルモデルやKJ法が用いられることが多く、最近ではパフォーマンス評価も登場してきている。

 

pp.156-157 「特別活動」

 

 特別活動は「『私とは何か?』」(p.156)を見つける場所である。

 日本の特別活動はその学ぶ領域の多様性が特徴となっている。1951年(S26)の学習指導要領の改訂以来、特別活動には教科書もなければ学ぶ内容も決められておらず、「年間35単位時間以上」が決められているだけである。

 小学校では主に、学級活動や児童会活動、クラブ活動、学校行事がそれに当たる。中学・高校では、ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事の3つとなっている。その他に、学生生活を充実させるためであったり、スクールアイデンティティの形成を目指し、独自の活動が行われることもある。

 1990年代以降、「空気」を読むことが過剰に求められるようになった一方、他人への無関心が問題とされている。特別活動では、体験を通して「人との触れ合い、感情交流」(p.157)を学びます。そして、「新しい自分や他者を発見」(:)し、「個人の不十分さを学び取るのである。

 特別活動は、体験することよりも、体験のプロセスから学ぶことが重要である。教師は生徒が体験からどのように学び取るのかを、補助する必要がある。

 

[i]指導要録とは、生徒の学籍や授業の計画、実施後の評価や点検等を記したもの。学校長に作成義務がある。これらは、授業の改善に使用されるほか、開示請求のために作成される。

 

[ii]「教えの過剰、学びの過少」で取り上げたような授業のこと